「イラク攻撃と有事法制に反対する演劇人の会」による反戦リーディング 第2弾
あきらめない -演劇は非戦の力-
2003年4月5日(土) 19:00 (18:30開場)
新宿 紀伊國屋サザンシアター
4月5日のピースリーディングの模様が  
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全国の演劇人への呼びかけ
「イラク攻撃と有事法制に反対する演劇人の会」では、3月18日のブッシュ米大統領の最終通告を受けて、行動を起こします。
 すでに4000余名の皆様から頂いた、「小泉純一郎首相への手紙」は官邸に、「世界の演劇人への呼びかけ」は世界数十カ国の演劇組織、各国で活動する演劇人、ホワイトハウスに送りましたが、この緊急事態を受け、19日付けで、小泉首相あてに、緊急声明を出しました。渡辺えり子さん、篠原久美子さんが、首相官邸へ「アポなし突撃直訴」を行ったことは、朝日新聞にも報道されました。
 また、4月5日(土)19:00より、紀伊國屋サザンシアターに於いて、「あきらめない」と題した「イラク攻撃と有事法制に反対する演劇人の会」の集会を開催する予定です。と同時に、全国に戦争反対の動きが広がることを切に望み、2月28日に紀伊國屋ホールで行われた集会の構成台本をインターネット上に公開し、オープンソースとします。また全国各地の多くの場所で、この無益な戦争に反対する演劇人の声が起こることを願ってやみません。4月5日の構成台本も続いてアップ致します。
 プロ、アマチュア、学校演劇など、主催団体はいっさい問いません。また、この中のごく一部を公演後の限られた時間に読んでいただくといった活用の仕方も大いに歓迎いたします。
 演劇に関わる人であり、この会の主旨に賛同し、下記のルールを守って上演して下さる方であれば、誰であれ、この台本をどのような形で使用して下さってかまいません。
 演劇にできることを、あなたの町で、あなたが、はじめて下さいませんか?
一人でも多くの演劇人の参加を、心から願っています。
「イラク攻撃と有事法制に反対する会」呼びかけ人代表
■台本 斎藤憐
■総合演出 渡辺えり子
■舞台監督 小野八着
■全体進行 篠原久美子 丸尾聡
■音楽 近藤達郎
■ピアノ伴奏 吉村安見子
■チラシデザイン JOYS
■出演 赤座美代子 朝倉摂 新井純 稲葉良子 今井朋彦 宇梶剛士 大沢健 大西孝洋 大森博 音無美紀子 小里清 観世栄夫 観世葉子 菅野菜保之 北村魚 北村岳子 木野花 小林チロ 斎藤憐 坂手洋二 神保共子 杉嶋美智子 田岡美也子 高橋長英 永井愛 中村獅童 中村たつ 中山マリ 西山水木 根岸季衣 林隆三 原康義 平田満 風吹ジュン 巻上公一 丸尾聡 緑魔子 村井国夫 毬谷友子 山口智恵 山崎清介 山崎ハコ 吉田日出子 吉野佳子 吉村直 ラサール石井 李麗仙 渡辺えり子 渡辺美佐子(五十音順) その他
■実行委員 小里清 くまがいマキ 斎藤憐 坂手洋二 篠原久美子 永井愛 福島明夫 丸尾聡 渡辺えり子
■協力 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場 紀伊國屋ホール
署名文の内容
世界の演劇人に対する呼びかけ
小泉純一郎首相への手紙
有事関連三法案への反対アピール
          世界の演劇人に対する呼びかけ

 私たちは、「9・11」に強い衝撃を受けました。
 でも、私たちの受けた衝撃は、アメリカの一般国民の衝撃とすこし意味合いがちがいます。
 戦争と殺戮の二十世紀を終えて新たな世紀をむかえた時に、自由と民主主義を信じてきた先進国がこれまでまったく体験もしなかった一撃に出会った衝撃です。
 ニュールンベルグでナチス・ドイツを裁いた数年後に、アメリカ空軍は北朝鮮のダムを爆撃して、沢山の餓死者を生みました。しかし、あの時、北朝鮮がアメリカを攻撃したわけではありません。ベトナムもアメリカを攻撃したわけではないのに、アメリカ軍はベトナムに枯れ葉剤を撒きました。
 アルジェリアがフランスを攻撃したことも、インドがイギリスを攻撃したこともありませんでした。
 日本が中国に軍隊を派遣した時も、中国軍が東京を攻撃したわけではありませんでした。
 しかし、二十一世紀のとば口で起こった「9・11」は、人類史上はじめて、弱者が強国の中心部に一撃を加えたのです。
 アメリカの大統領が大好きな聖書から引用すれば、あのテロは、小さなダビデが放った巨人ゴリアテへの一撃でした。小さなダビデがパチンコで放った石はアメリカ製の航空機であり、直撃をうけたゴリアテの眉間が貿易センタービルでした。
 あのテロは、次の事実を私たちに教えてくれました。
 アメリカの三千億ドルという途方もない軍事予算は、アメリカに安全をもたらさなかった。世界中に設けられたアメリカの軍事基地、世界のあらゆる海に配置された米国艦隊はアメリカに安全をもたらさなかった。そして、私たちは知りました。三百キロの多方向から同時に二百個のミサイルをキャッチするレーダーと、十二個以上の目標を攻撃できる、射程百キロを超す迎撃用ミサイルを搭載したイージス艦も、素手のテロリストにはなんの効果もないことを。
 私たちは当初、ブッシュ大統領に、「イラク攻撃は非人道的であるばかりでなく、アメリカの国益をも損なう」との手紙を送ろうと考えました。
 しかし考えてみれば、アメリカ政府の中枢を占める人々は、すべてを知っているのです。私たちから、隠された真実を聞く必要なんかないのです。
 そして、世界最強の軍備を持つ国アメリカの暴走を止めることは、外側つまり外国からでは困難なのです。それができるのは、最強の国で選挙権を持つアメリカの人々です。
 私たちはそのアメリカで「冷静になってくれ」と孤軍奮闘しているわずかな人々に、外側からエールを送ることはできます。
 マクベスを批判しつつ、マクベスを愛することができる私たち演劇人は、それぞれの国の政府と国民に向かって「イラク問題の武力によらぬ解決」を求める声を上げるよう、ねばり強く呼びかけていこうではありませんか。
          小泉純一郎首相への手紙

  小泉純一郎首相。
 今から六十数年前、アジアの東のはずれにある私たちの日本は、欧米諸国との戦争を始めました。その時、日本の若者たちは、欧米の侵略からアジアを守るというスローガンを信じて戦い、日本は世界の孤児となりました。
 その戦争に敗れた日本は、アジアの国々に謝って、「国際紛争を武力では解決しない」と世界に約束しました。
 しかし、その四年後には、自衛隊の前身である警察予備隊を作り、「アメリカの正義」のための朝鮮戦争では日本の米軍基地が使われました。その後のベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン爆撃といったアジアの国々へのアメリカの攻撃に、日本は米国の後押しをし、ついには自衛隊をインド洋に派遣するまでに至りました。
 六十年前、日本は「アジアを侵略する米英を懲らしめる戦争」だと偽りを言いました。
 しかし、あなたは今、アジアを攻撃する米英を支持しています。そんな日本を、アジアの人々はどう考えるでしょう。
 一昨年、アメリカの経済力の象徴である貿易センタービルが自爆テロによって崩壊したとき、アジアの人々が驚喜乱舞する映像をテレビは報じていました。
 かつてアメリカが広島・長崎に原爆を落としたニュースを聞いた時、アジアの人々が「よくやってくれた」と、嬉し泣きをしたという事実があります。
 私たち日本がどれほどアジアの人々に憎まれていたのか、そして今、アメリカがどれほどアジア五十億の人々から憎まれているかを、私たちは知ることになったのです。
 日本がアメリカの友好国なら、その憎しみの結果であるテロは、けっして武力では抑えられないということをブッシュ大統領に教えてあげることが、先の戦争に倒れた日本の兵士たちへのあなたのなすべき償いだと私たちは考えます。
 私たちは知っています。地雷だらけのカンボジアでボランティアを続けている日本人たち、ソマリアのエチオピア難民のために灌漑用の風車を作ってきた日本人たち、アフガニスタンで井戸を掘り続けている日本人たちが、いかに現地の人々から信頼されているかを。
 あなたのブッシュ支持のたった一言で、フィリピンのネグロス島の、チェルノブイリの、バングラディッシュでボランティアたちが数十年にわたって築いてきた日本人像が、こなごなに崩れました。 あなたには、日本人を爆弾を落とす側に変える権利はありません。
 私たちは今、アメリカの戦争を支持する小泉政権を批判し、不支持の行動を全国的に展開することを宣言します。
 そして、アジアへの攻撃を支持するアジア唯一の国になって、ふたたびアジアの人々に憎まれる日本には、なってはならないと思います。
 私たち「歴史の記憶を語り続ける責務を持った」演劇人は、爆弾を落とす側でなく、爆撃の下に住む人々と共にあり続けることを今日、表明いたします。
          有事関連三法案への反対アピール

 私たち演劇人は、対話によって成立する演劇が持つ力を信じています。外交努力とは、まず、平和を願い、平和に近付くためにどれだけの説得力ある言葉を生み出すことが出来るかにかかっています。日本の外交政策において、この「説得力ある言葉を生み出す努力」が、いかにかえりみられてこなかったか、深く反省こそすれ、それが無視される状況は、決して許すわけにはいきません。

 政府・与党の提出している修正案は、武力攻撃のみを前提にしたもので、そこに至るまでの外交努力については、なんら明記されていません。
 今回のイラク攻撃支持に至る政府・与党の対応を見るにつけ、国民の言葉が一切無視された状況を考えるにつけ、有事関連三法案を成立させるわけにはいきません。なぜなら、この法案が成立するということは、国民から政府へ白紙委任状を渡すことに等しいからです。

 私たちは、国の主権者として、自分の生命や、この国の将来について、自分で決められる権利を再度確認したいと思います。国の一方的な定義で、戦争に巻き込まれ、知らないうちに、戦争に加担し加害者にさせられるような状況をまねかないよう、そうした状況を準備する一切の法案に反対します。
 また、人権を守り強化するための努力を続け、自分達の税金が、人を殺すために使われることを拒否します。
 「正義のための戦争」や「自由のための戦争」という言葉には、だまされません。いかなる戦争であれ、殺されるのは、普通の人々です。市民を傷つけない戦争など、もはやどこにもありません。
 世界的な経済悪化の状況で望まれるのは、戦争という大量殺人ではなく、国境と人種を越えた共存の世界観です。武力による解決を強い意志で放棄したまま、世界中の大量破壊兵器の廃棄と、環境資源の保存を率先して進めていくことこそが、世界唯一の原爆被害国である日本の責務ではないでしょうか。
 私たちは戦争と、それを可能にする法案すべてに反対します。